蟹者

@kanimono

【6月3日は】測量ってめっちゃ簡単にいうとなんなの?【測量の日】

今年の測量士試験を申込みだけして当日サボった俺が測量ってなんなのか優しく教えます。

難しい話はできるだけ脚注に回しますので、さっくり本文のみ読んでもらうのが吉でしょう。

登場人物

f:id:russENG:20170603084038p:plain:w100 村田 ・・・ 『アマゾンゴールド』という熱帯魚店を経営。仕事柄、非常に明るくおしゃべり好きで気さくなおじさん。

f:id:russENG:20170603084622j:plain:w100 社本 ・・・ 『社本熱帯魚店』の店主。気弱で大人しい性格で、自分の思っていることをあまり口にしない。

f:id:russENG:20170603084849p:plain:w150 みちびき ・・・ 準天頂衛星。日本のほぼ真上に長い間留まっている。





・・・


ドン・・・ドン ドン・・・ドン・・・


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ドン・・・




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その前に、そもそも測量って聞いたことない人いますか?

たまに道路とかでこんな黄色い機械覗いてたりする人いませんか?

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あとこんなおめでたい棒持ってる人とか見ませんか?

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あれです。あれって何してるんですか?というお話です。


測量をめっちゃ簡単に要約すると、ものさしとか分度器的なモノとかで2点間の長さと角度を求めてるだけなんです。

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「量」を「測る」と書く通り、要は、それしかしてません。*1

ただ、数kmとかを測ったり、山の地形を測ったりする。あと、そんなでっかい「ものさし」は存在しないので、なんかのメカや工夫に頼らなければなりません。

で、そこまで行くと誤差(本当の値と測った値のズレ)がすごそうじゃないすか。それをできるだけなくす。

ざっくり言うと、目標としては、数km測った時に1mmとか2mmずれるだけ、とかそんなレベルです。

そしてそれをたくさんやる。たくさんやると大変なので、できるだけ簡単にやる。そういう作業なり営みなわけです。

それを測っててどうするか?と言うとそれを元に地図を作ったり、ビルを建てたりする工事の計画を立てたりするんですね。

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なのでたくさん測った値をきちんと把握する。「検証」や「確かめ」の作業が必要になります。

そうしないと建てられないビルとか港とか、空港とか(たぶん)あるんです。そしてちゃんと外国の地図とかと合わせないと世界規模の気象観測とかできないから天気予報もできないし、そもそも人工衛星のデータもちゃんと使えないのでカーナビも動かないし、ポケモンGOもできません(たぶん)


f:id:russENG:20170603084038p:plain:w100 村田「仕事をすると何かしらいいことがあるんだからよ!」

f:id:russENG:20170603084622j:plain:w100 社本「ここまで来たらまるで水族館ですよ」


測量をざっくり言うと次の3つの行為に分けられます


① 2点の平面上の位置関係を求める*2

② 点の高さを求める*3

③ ①と②をGPS的なもの*4で便利に代用する


① 2点の平面上の位置関係を求める

さあ、下の図のように地図上にAとBが存在するとして、この位置関係はどのように定められるでしょうか?

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まあ、まず長さを求めたいですよね。

1個目はロープのような長いものをピンとはる、という方法がありますね。

実際にそういう測量のやり方もありますし、伊能忠敬おじいちゃんはそうやって日本全国を測ったわけですが、ここでアイツの出番です。

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/0/0c/DTM-A20LG-04.jpg/440px-DTM-A20LG-04.jpg

トータルステーションです。黄色くないですが、これと一緒です。

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こいつはほぼなんでもできるので、もうこれを紹介すれば今日の話はほぼ終わりです。

何をするかというと、こいつからビームが出ます。

まあビームは言い過ぎなんですけど、ある一定のリズムで光を出します。

こいつを点Aに設置し、点Bに特殊な鏡を設置してやると、ある一定のリズムの光がAに跳ね返って来ますよね。それにかかる時間を計測することで、点間の長さがわかるという仕組みです。*5





??「ちょっと待ってやコラ!!!」





?? 「たかだか光で点間の長さがわかるだあ?」


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??「おめえ、ここおかしいんじゃねえのか?」




そうですね。確かに説明不足なんです。当然ながら点Aと点Bの間はこんな感じでしょうし、これでは長さが求まっても、使えるデータではありません。

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地図上での長さが欲しいわけですから、あくまで真上から見たときの長さでなければ意味がありません。


そこでトータルステーションちゃんは賢いというお話です。*6

トータルステーションは、図のように2つの回転軸方向にくるくる回るようになっており、使う人はくるくる回しながら、ほぼ全ての角度のターゲットに照準を合わせることができるのですが、中に分度器的なものが入っているので、自分がどのくらい傾いたのかの角度を覚えているのです。

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あとは、三角関数的なもので、求めたい長さ=水平方向の長さ=地図上の長さ が求められるわけです。*7

http://w3e.kanazawa-it.ac.jp/math/category/sankakukansuu/image/sincos-sankakkei.gif





じゃあ、長さはわかったので角度を求めましょう。

と言いつつ、もう説明してしまいましたが、トータルステーションちゃんは、角度も測れます。

これでたくさん点を測りまくって地図を作ることができますね。

f:id:russENG:20170603185800p:plain*8




f:id:russENG:20170603084038p:plain:w100 村田 「なーに、遮るものがあれば透明にしちまえばいいんだから」

f:id:russENG:20170603084622j:plain:w100 社本 「・・・・・。」








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?? 「あの男の周りで行方不明者が30人以上もいるんですよ・・・」



















ドン・・・ ドン ドン ・・・ ドン・・・











② 点の高さを求める


すでに説明した通り、トータルステーションでも、点の高さを求めることができます。

ただ実際に現場では、レベルと標尺(スタッフ)という道具を使います。精度的な理由です。

http://www.movecorp.co.jp/images/Leica/SPRINTER/Sprinter_600250.jpg




ただちょっと待ってください。






今、当たり前のように言った、「高さ」とは一体なんでしょうか?
















そもそも、さっきも話に出てきた、「真上」とは一体どの方向のことを指すのでしょうか?













だって、そもそも地球って丸いじゃないですか?

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f:id:russENG:20170603084038p:plain:w100 村田 「地球が丸いだあ?」




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村田 「お前の考える地球ってのは

丸くてツルツルして青いんだろ!!!!

俺の考える地球はただの岩だ!!

ゴツゴツした岩の塊だ!!!!!









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その通りなんです。

測量において、「高さ」とは、地球の重心からの距離のことと定義されています。

地球は完全な球体ではなく、自転の影響で横に広がった楕円体の形をしています。楕円体ですので、長半径と扁平率によりこの形は定義することができます。この楕円体の形は、技術の進歩とともに更新され続け、現在では「GRS80」という地球楕円体が最も確からしいとされ、世界測地系もこれに準拠、日本においても2001年からこれを採用しているほか、現在ではローカルな単位の測量においても、世界測地系にしたがって行うことが一般的になっています。

さらに地球は、ゴツゴツした岩の塊です。さらに、岩盤の密度の差から、微小な違いで重力の強さが局所的に違っています。ローカルな測量では問題にならないですが、GPS的なもの、人工衛星を用いた測量も含めたり、世界基準で測地系の整合性をはかるという話になってくると、高さの基準面をどのように決定するのか、という話になってきます。そこで、地球が一様に海水面で覆われたと仮定した形を、高さの基準面としており、これをジオイドと言います。GPS的なものを用いた測量では、地球を3次元として捉えた座標系(地心直交座標系)から、地球の表面上を平面として・・・

GPS的なものを用いた測量の話をする前に、まず他人がした測量や地図とこれから行う測量を合わせるという作業をしなければいけません。日本では、国土地理院が行う「基本測量」によって、様々な測量の元となる・・・

























今日も日本のどこかで・・・
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人間は隣人を利用し・・・
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そしてたまには隣人を愛し・・・
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そして死んでいく・・・
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一方その頃、衛星軌道上では・・・

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ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・


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準天頂衛星初号機「みちびき」を利用することで、山間部や高層ビル街のようにGPS信号が届きにくい、見通しの悪い場所でも測位ができるようになるだけでなく、補強信号を利用することで測位精度を数cmまで高めることができます。





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測量の日 - 日本測量協会






































以下、測量に関する補足事項など。
*9*10*11*12*13*14

ちゃんとわかりたい方はこちら。
絵とき 測量






冷たい熱帯魚はスパイシーですけど、面白いですよ!
www.youtube.com


Cold Fish / Tsumetai nettaigyo / 冷たい熱帯魚 / movie 2010
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*1:「測量は地表面上の地点の相互関係および位置を確立する科学技術である。」日本測量協会刊「現代測量学」前文より(坪川家恒)

*2:ちゃんとした言葉では「三角測量」「多角測量」「基準点測量」などと呼ばれるものです

*3:いわゆる「水準測量」と呼ばれるものです

*4:GPS的なもの、と書いたのには理由があって、GPSとはアメリカが軍事目的で開発した衛星を利用した測位システムであり、近年ではロシアなど他国の同様のシステムも用いていることから、国土地理院ではGNSS測量と、名前が書き換わっています。

*5:光波測距儀 - Wikipedia

*6:より正確には、トータルステーションとは、もともと「トランシット」という角度を測る器械と、「光波測距儀」という距離を測る器械を一緒にしてデジタル処理できるようにしたものですので、「トランシット」の機構が賢い、ということになるでしょう。

*7:ここであれっと思った人はその通りで、トータルステーション自体が持っている器械的な傾きを考えなければいけません。具体的には、地面に対しなるべく水平にしなければいけません。これは、トータルステーションについてる3つの整順ネジにより傾きを3軸方向に変えられるようになっています。これにより水平を作り、実用可能な精度にて距離の測定など行うことができます。

*8:これは絵なので、当たり前のように何かしっかりとした「縦線」が描かれています。実際には、目的によりますが、「何かの基準となる点(基準点)を複数個観測する」「真北方向を何らかにより決定する」などして座標軸を決定します。真北の決め方は割と厄介で、コンパスの指す方向と真北とはずれている場合がほとんど。日本では地域により最大9度ずれることもあります。 →真北とは? | 用語集とGISの使い方 | 株式会社パスコ

*9:①測量の種類としては、他には空中写真測量や地形測量、移動車両計測(Googleカー的な)やドローンを使ってSfMをする測量、レーザースキャナーを使う測量もあり、なんでもありです。そういう意味で画像処理工学との学際分野も多々あります。

*10:②路線測量という分野では、道路の曲線(クロソロイド曲線)をデザインします。幾何学とか微分が好きな人はたくさんできます。私はキライです。

*11:③本文中では、簡単に地図を作っていましたが、実際には、誤差をできるだけ打ち消すため(特に角度の)複数回の観測を行ったりします。また、一つの測量の作業で、観測箇所は何個もあり、その観測する点を繋いだものを平均図なり三角網とか呼ぶのですが、これを精度がよくなるよう、バランスよく作らなくてはいけないし、また誤差をどう分配するかといった問題もあるので、最小二乗法を使うし、最小二乗法をベクトルの式にした観測方程式を作り、解いたり、また自由度についても理解する必要が出てきます。測量士試験にも出て来るので、これって何の試験なん?ってなります。

*12:④このブログを読みに来る人はITエンジニアさんが多いみたいなので、そういった測量にまつわる数理とか、あとはGISなりの地図情報の再利用にまつわるデータ設計方法の話も出て来るので、何かまつわる面白い話題が出てきたら記事にしようと思います。

*13:⑤本文で紹介したようなオーソドックスな測量は、国土交通省の「作業規定の準則」によりやり方、手順が定められています。測量はできるだけ誤差を無くし効率的にしようとする営み、と書いた通り、その当時当時の最新技術や考え方により手順が修正されていくし、技術を管理するのが国土交通省所管の国土地理院というお役所なので、役人言葉や”手垢”にまみれた分野であるとも言え、いわゆる自然科学を履修してきた人からすると、とてもとっつきづらい分野であると感じています。

*14:⑥地球の重力の強さに関する局所的な違いの話はご存知でしたか? 地図もあるので、眺めてみると面白いですよ →東日本は重力高めだった。地球上の重力を可視化した地図(オーストラリア研究) : カラパイア